神奈川近代文学館で開催されている「作家と万年筆展」へ行ってきました。
明治、大正から現代までの作家27人の生原稿、書籍、手紙などとともに、愛用の万年筆が展示されています。
ガラス越しではありましたが、生原稿からは、筆跡に残るその人の思いや息づかいがリアルに伝わってきました。
「あの小説はこういう文字で書かれたのねぇ」と思いながらじっと見ていると、作者と対面しているような気さえしてきます。こうなると、筆跡の細かい特徴がどうのこうのという世界ではありません。
筆跡診断も、実は理詰めで診断するだけでなく、感じとるという要素も大きいのです。
なぜなら生身の人間が書いたものが対象なので、同じ文字や似た形の文字でも、5コ書いて5コ同じ書き方になるとは限りません。必ず「揺れ」があります。それを杓子定規にとらえようとすると、かえってわからなくなる。そういうものです。
今回の展覧会では文字から伝わってくるものを「感じる」ことに専念しましたが、それも筆跡心理士としての大事な修業だったりするのです。(。。。というのは後づけで、ただただ楽しんでいた、というのが本音ですが。)
その文字を書くのに使われた万年筆は、やはり存在感たっぷり。ペン先の減り具合から、持ち方のクセやどのくらい使い込んだかがわかるので、興味深かったです。
時代もあるのでしょうが、意外なほど小ぶりのものが多く、ブランドではペリカンとモンブランが目立ちました。私がいいなぁと思ったのは、吉屋信子愛用の花模様のエッチングが施されたシェーファーでした。
作家が万年筆について書いたエッセイも紹介されていて、それぞれの思いが伝わってきます。「男の刀のようなもの」という人もいれば「もらったものをただ使っている」という無頓着な人もいて、そんな個性の違いも面白かったです。
小説や、文字や、筆記具に興味のある方ならきっと楽しめると思います。今月26日までやっていますので、港の見える丘公園をお散歩がてら、いかがでしょうか。
コメント